通常、0.5 %(又は1%) xylocaine を用い、浸潤麻酔を行う。よほど汚染が強くない限り創縁より麻酔してよい。(創周辺の正常皮膚に針を刺すより痛みがずっと少ない。)顔面は血流が多く止血のためエピネフリン入りの xylocaine を使用する。xylocaine の極量は 5mg/kg (エピネフリン入りの場合は 7mg/kg) である。
2.洗浄、消毒
3.縫合糸感染予防のため、最も重要!
泥、土等がついて非常に汚染が強い症例は、まず水道水、あるいは生食水で大きな汚れを洗い流す、イソジンにて皮膚消毒後麻酔し、創内部は生食水で十分洗浄する。 創内部にはイソジン、ヒビテン、ラザール等は使わない。原則として自分の目に入れられない物は創内に入れない。 創内に異物が入っていないかどうか必ず確認する。異物が入ったまま縫合すると感染必発である。 結膜内には決してヒビテン、イソジンを入れない。 眼瞼部の消毒には PA ヨード (OR に常備) ,あるいはイソジンの16倍希釈液(生食水で薄める)を用いる。処置後必ず結膜内を生食水で洗浄する。(ヒビテンで失明した症例有り。) 口腔内は汚染が強い場合は生食水で洗浄する。消毒は不要。
4.抗生剤 筋膜に達しない皮下組織までの裂創で汚染の少ない場合は原則として抗生剤は不要。通常皮膚は、4-0 あるいは 5-0 ナイロン、 顔面は 5-0 あるいは 6-0 ナイロン(要コンサルト) 頭皮は3-0 ナイロンで縫合する。 口腔内は 3-0 あるいは 4-0 の吸収糸(バイクリル、クロミック等)で縫合する。
筋肉、腱、関節損傷の症例はレジデントにコンサルト。 口腔内に達する創には経口抗生剤を3日間処方。
5.破傷風予防
創の状態と過去の破傷風免疫に応じた prophylaxis を行う。
(11.tetanus toxoidの使用を参照)
6.レジデントにコンサルトすべき症例
7.縫合してはならない創(ドレナージをはかる必要のある創)
8.患者への説明:
10.縫合糸の選択
11.Tetanus toxoid の使用
種類 部位別用途 Silk 結びやすい。組織反応少。感染巣になりやすい。 Nylon 感染に強い。組織反応少。結びにくい。ゆるむ。 5-0顔面 3-0,4-0 関節の皮膚(緊張のかかる部位,長期間糸をおく時) Chromic & Cut gutハ 吸収性や組織反応大。ゆるみやすい。 3-0,4-0 口腔内 Wire 感染に強い。組織反応最小。結びにくい。 縫合針の選択
角針 皮膚 丸針 皮下,粘膜
破傷風予防接種歴 | 破傷風になりにくい傷 | 破傷風になりやすい傷 | ||||
Toxoid 0.5ml iM | テタノブリン | トキソイド | テタノブリン | |||
基礎免疫(-) | +
(受傷時,1ヶ月後,6ヶ月後) |
− | + | TIGH 250U 又は500U iM
(適宜ペニシリン) |
||
基礎免疫 (+) | 最後の接種が10年 | − | 最後の接種が5年 | − | ||
未満は− | 以上前は+ | 未満は− | 以上前は+ |
(参)Tetanusになりやすい創
12.爪下血腫
- 汚染創(10<細菌/gm)
- 挫滅創
- 穿刺創(筋肉に達する傷)
- 銃創
ドアや引き出しに指を挟むなどの鈍的圧迫外傷によって起こる。
<症状,診断>
指先の疼痛。爪下面に赤黒い血腫
レントゲンにて末節骨骨折の無いことを確認
<治療>