【下痢】 1. 次の項目を問診する 1) 性状をきく 水様便か,黄色か白色便でないか?.血便の有無は?. 2) 1日の便の回数,持続日数. 3) 1日の水分摂取量はいくらか?.嘔吐を伴うか?.その回数は?. すなわち,脱水の程度と細菌性かどうかのチェックを行う. 2. 理学所見にて次の項目を確認する. 1) 意識状態(活気はまだあるか,笑みがまだ見られるか) 2) 脱水の程度はどうか(輸液療法の項参照) 3. 以上より重症度を評価し治療方針を決める 1) 脱水軽症の場合(体重減少5%以下,全身状態比較的良好) 水分経口摂取可能ならば食事療法を指導し,帰宅させる. 食事療法 (1)適切な経口補液につとめ,少量を頻回に. (2)補液としてはソリタT3顆粒が最も適切でかつ安価である. (1包=27円,1包を100mlの白湯に溶かしてできあがり) 市販のスポーツドリンクでも良いが,十分な電解質を含んでおらず,かつ高価である (3)市販ミルクは2/3〜1/2に希釈してあげる. 大豆乳は牛乳アレルギー以外の時は適当でない. (4)カロリーより水分・電解質の摂取が肝要であることをよく説明する. 2) 脱水中等症の場合(体重減少5〜10%、活気不良) (1) 経口摂取は水分のみにとどめ輸液療法を行う (2) CBC,Chemi (3) 細菌性腸炎の可能性,溶血性尿毒症症候群の合併に留意する (血便の有無,性状をチェックする) 3) 脱水重症の場合(体重減少10%以上、血圧低下,意識障害) (1) 直ちに輸液を始める(高張性脱水か低張性脱水か至急確認) L/RまたはN/Sを10〜20ml/kgを急速輸液して血圧を保つ (2) 血液ガスもチェックし,メイロン1ml/kgで代謝性アシドーシスを補正する * 中等症以上の脱水症はすぐ小児科コンサルトする 4.細菌性腸炎の鑑別 1) 幼若小児腸炎の約10%が細菌性である 2) 本邦では起炎菌としてカンピロバクター菌,サルモネラ菌が多く,特にサルモネラ腸炎は増加 している 3) 突然発症,頻回下痢(1日5回以上),粘血便,テネスムス,便スメア陽性(PMN1視野5個 以上),高熱などは細菌性を示唆する 4) URI症状の合併,白色下痢便(ロタウイルス)はウイルス性を示唆する 5) 細菌性を疑うときは血液培養を忘れずに.サルモネラ菌血症がよく見られる. 6) 幼若児(2歳以下)の頑固な血便は溶血性尿毒症症候群を疑う. 小児科 吉村 博