痙攣

 痙攣はその激烈な症状のために周囲にいるものが動揺しがちである。冷静に、かつ迅速に対応することが求められる。救急室受診時にも痙攣が続いている場合は、たいてい痙攣重積状態である。速やかに問診、診察、モニタリングを行い、痙攣を止める処置をする。痙攣が消失している場合には、原因を検索する。


<痙攣が続いているとき>
  まず衣服をゆるめて、転落しないようにベッドに寝かせる

 1)観察、モニタリング
  (1)バイタルサインのチェック(血圧も)
  (2)発作の型を確認する
  (3)気道確保(必要ならair way , 肩枕)、酸素投与
  (4)誤嚥防止(顔を横に向けて、必要なら口腔内吸引)
  (5)静脈路の確保、採血、血糖チェック
  (6)心電図モニター、パルスオキシメータをつける

 2)薬物投与
  (1)Diazepam
   ホリゾン;0.3mg/kg/dose iv (max 10mg/dose)  または 0.5 mg/kg/dose  supp
    2〜3 mg/min (0.4〜0.6ml/min)でゆっくり静注する。
    静注では1〜2分で効果発現する。無効時は10分後に同量を投与する。
    注腸でも5〜10分で効果発現する。
    意識レベルの低下、呼吸抑制に注意する。
   ダイアップ;0.5mg/kg/dose  supp
    4mg と 6mg の製剤がある。体重に応じて使う。
     (例:8〜12kg 4mg、12kg 以上 6mg)
    約15分で効果発現する(5分で有効血中濃度に達するとの意見もある)
    約8時間有効濃度を維持する。
   *これで痙攣が止まらない場合、呼吸抑制のある場合、意識障害が続く場合は急いで   レジデントコール。

  (2)Phenytoin
   アレビアチン;15〜20 mg/kg iv
    30分以上かけて loading する
    効果発現まで数分〜20分かかる
    低血圧、不整脈が起こるので、必ず心電図モニタリングをしながら行う。

 3)検査
  必ず行う検査
   血液検査:CBC,chemi、血液ガス、血糖チェック(デキストロスティック)
  必要に応じて行う検査
   血液検査:CRP、アンモニア、血清検体保存
   髄液検査:髄液圧の測定、髄液一般、培養、検体保存
    髄膜炎が疑われたら必ず行う。脳炎、脳症が考えられるときは、可能なら検体保存    もとる。できればいくつかに分割して保存する。
   尿検査:尿一般
   心電図:心電図モニター上異常がなくても必要に応じて12誘導でチェックする
   頭部CT:脳圧亢進が疑われるとき、focal neurological sign があるときに行う
    tumor を疑うときは enhance も行う。(ただし脳腫瘍がけいれんで発症すること    はまれである。)


<痙攣が消失している場合>
  原因の検索を行う。多くは熱性痙攣だが、中には髄膜炎・脳炎のことがあるので必ず否 定する(熱に伴う痙攣の0.1%〜5%が髄膜炎である。病歴、理学所見で否定できないとき は腰椎穿刺を行う)。少なくとも2〜3時間は観察して意識状態、経口摂取などが普段と 同じ状態であるのを確認する。

 鑑別疾患(けいれんを起こしうる疾患)
 1,熱性けいれん
 2,髄膜炎、脳炎、急性脳症
 3,てんかん
 4,血糖、電解質異常
 5,高血圧
 6,中毒
 7,脳腫瘍
 8,不整脈、その他

 病歴、理学所見、検査
  上記疾患を鑑別するために問診、所見をとる
  検査:電解質、血糖は必ずチェックする
  必要ならけいれんが続いているときと同様に検査を出す。

 各疾患の特徴
 1)熱性けいれん
   小児の約3〜5%が本疾患の既往を持つ。大部分が発熱をして24時間以内、体温が  急上昇するときにけいれんを起こす。
   発症;生後6ヶ月〜6歳未満、1〜2歳がもっとも多い。
   発作型;全身性強直性または強直間代性がほとんど
   持続時間;80〜90%は5分以内におさまる。来院時はおさまっていることがほと     んど。
   治療;受診時にダイアップ5mg/kg Suppして、完全に普段の覚醒状態に戻る      まで観察する。
      意識状態もよく経口摂取も良好なら帰宅させ、近い外来を予約する。その際、     必ずしもダイアップを持たせる必要はない。(熱性けいれんの半数は一度しかけ     いれんしない、ほとんどは短時間でおさまり後遺症を残さない。) ただし、親     の不安が非常に強い、家から病院までの距離が遠く受診まで時間がかかる、など     の場合はダイアップ同量を1個処方して、8〜12時間後に発熱が持続していれ     ば使用するように説明して帰宅させる。

   熱性痙攣以外の疾患を考えるポイント
     発熱から24時間以上経てからけいれんしたとき
     同一発熱中に頻回に起こる
     けいれん終了後の意識障害やfocal neurological signがある。
     年齢、発作型、持続時間のいづれかが典型例にあわない場合。

 2)髄膜炎、脳炎、急性脳症
   生後6ヶ月未満の発熱に伴うけいれんは、必ず腰椎穿刺を行う
   それ以外でも、発熱に伴うけいれんで髄膜炎、脳炎が否定できないときは腰椎穿刺を  行う。ただし、脳圧亢進が疑われるときは禁忌。
   髄膜炎、脳炎は medical emergency である。腰椎穿刺をしたら早めに結果をフォ  ローしてコンサルトする。

 3)てんかん
   初回の無熱性痙攣;てんかんと診断することよりも、他のけいれんを起こす疾患がな         いと否定することが重要。器質的疾患がなければ外来回しにする。否定         できなければレジコンサルト。
   てんかん患児のけいれん;いつもと同じ型のけいれんであればあわてることはない。         血中濃度を参考に、なぜけいれんしたのかを考える(怠薬、他の薬と併         用した、発熱など)。いつもと異なる型のけいれんであれば、器質的疾         患を考える。


  参考:てんかん 発作型分類
   発作型がわかればてんかん治療の参考になる。問診を注意してとることが重要。
  1,全般発作
   1)強直発作;
   2)間代発作;
   3)強直間代発作;
   4)欠伸発作;
   5)ミオクローヌス発作
   6)失立発作
  2,部分発作
   1)単純部分発作
   2)複雑部分発作
   3)二次性全般化