喘鳴 WHEEZING



 喘鳴を主訴に小児が来院した場合、まず重症度の判定をするのがもっとも大切である。重症発作の場合は、酸素投与、ベネネブ、血管確保をしながら急いでレジデントコール。

 気管支喘息の発作で来院するものがほとんどであるが、初回の喘鳴発作は種々の疾患を鑑別することが重要。



<気管支喘息>



1,発作の重症度判定

      呼吸困難       動作     食事   会話    睡眠   



 小発作  苦しいかと聞いても        普通       普通     普通     よく眠れた

      本人はなにも苦しさを訴えない  



 中発作  苦しいかを聞くと苦しいと答え、  少し動き    少し食欲   会話中少し   横に眠れるが          しばしば肩呼吸がみられる    が悪い     が落ちる   息切れがする  何回か目を覚ます



 大発作  とても苦しそうで顔色が悪い    あまり動こう  食事は摂取  話しかけると  横になれず、

      起座呼吸             としないし、  しようとし  返事をするが、 しかもほとんど

                       動いても動作  ないことが  自分からは会  眠れない状態

                       が大変悪い   多い     話をしない



 普段からピークフローでモニタリングしている児は、発作時のピークフロー(PFR)が発作の重症度、改善の指標になる。(図1)

        PFR(peak flow rate)    

 小発作   70-80% Predicted or personal best

 中発作   50-70%

 大発作   <50%



 最重症例の目安(急いで小児科コンサルト)

  1,日常生活が不能、臥位でいられない(起座呼吸)、会話が困難(乳児では不機嫌)

  2,チアノーゼ、または蒼白

  3,陥没呼吸、鼻翼呼吸

  4,呼気の著明な延長

  5,呼吸数の増加

  6,呼吸音の減少、喘鳴の消失





2,病歴

  1,発作の誘因;感染合併の有無など

  2,発作が起こってからの経過時間

  3,来院までの治療

    気管支拡張剤服用の有無;気管支拡張剤を常用している症例や、来院前に拡張剤を   服用している症例では、その服用時間と量を確認する。

    気管支拡張薬を常用(RTC;round the clock)していながら発作を起こした例   や、自宅にネブライザーがあり吸入しても効果がないために来院した場合は、それ以   上の治療を要すると考えた方がよい。





3、治療

 小発作、中発作:ベネネブ20分毎2回

   →反応良好=喘鳴なし、SpO2 95%以上ならば帰宅

         かかりつけ医、または当院外来受診を勧める

   →反応不良=喘鳴あり、またはSpO2  95%未満

         輸液、ベネネブ 2時間毎、SpO2  93%以上を保つように酸素投与

         以上をおこなってレジデントコール

 大発作:ベネネブ、酸素投与、血管確保しながらレジデントコール



 それ以後の治療法

 レジデントは以下の治療法の中から、患児の重症度に応じて選択する。

  1、ベネトリン持続吸入

   ベネトリン0.1~0.2mg/kg/H

  2、ステロイド静注 

   ソルコーテフ5mg/kg/dose 6時間毎静注

   またはソルメドロール1mg/kg/dose 6~8時間毎静注

  3、アミノフィリン間欠投与

   アミノフィリン4~5mg/kgを6~8時間毎に静注

  4、アミノフィリン持続点滴

   loading 後に0.8~1mg/kg/Hで持続点滴

  5、イソプロテレノール持続吸入

   イソプロ(プロタノール)0.02% 1 ml/kg(10~40ml)+生食500ml    またはアスプールを10倍希釈して10~15lの酸素流量→インスピロンで持続吸入

  6、イソプロテレノール持続点滴

   HRをモニターしながらおこなう

   イソプロ0.05~0.1μg/kg/min持続点滴より開始。

   HR180前後を目標に漸増





<鑑別疾患>

 初回の喘鳴の場合は、必ず胸部X-pをとり、以下の疾患を鑑別する

  1、細気管支炎

    2歳未満、多くは6カ月前後に起こる

    原因;RS virus , parainfluenza , adeno, rhino , mycoplasmaなど

    胸部X-p;両肺の過膨脹、時に両肺門部の浸潤影

    治療;酸素投与と輸液、気管支拡張薬(ベネネブ)

    *喘息の初回発作と鑑別は困難だが、家族歴やベネネブに対する反応性などがポイ   ントとなる。



  2、気管支異物

    問診が重要な診断の手がかりとなる。1~3歳の幼児に多い。ピーナッツや豆、小   さなおもちゃが多い。典型例:口にほおばって遊んでいる最中に、突然咳こみ、その   後より喘鳴が聞こえる。

    理学所見;呼吸音の左右差、減弱、喘鳴

    胸部X-p;患側の過膨脹、透過性亢進、または肺虚脱

    *胸部X-pは正側に加えて、吸気・呼気でもとる。(乳幼児で困難な場合には、   両側臥位での撮影も参考になる)



  3、その他

   クラミジア肺炎;生後1~3カ月に起こる無熱性肺炎

          呼吸音はralesが主でwheezingはまれ

   誤嚥性肺炎、胃食道逆流

   気管支肺異形成 bronchopulmonary dysplasia

   まれな先天性疾患;vascular ring , bronchomalasia , bronchogenic cyst ,               lobar enphysema など