【輸液療法】



1. 初期輸液



1) ショック時

   L/R,N/S,5%アルブミンなど細胞外液に相当するものをBolus(10〜20ml/kg)で急速輸液 

   を行う

2) バイタルが安定しているとき

(1) 脱水が最も考えられるとき,脱水の程度を臨床的に素早く判断し,脱水の程度(軽度,中等度,高度)に応じて,脱水量(*1)+維持量(*2)を計算し,カリウムを含まない1/2生食水に近い組成液(ソルデム1,ソリタT1,KN1Aなど)で輸液を開始する(*3)



  (*1)脱水量

                軽症    中等症  重症

        乳児    5%      10%     15%

        幼児・年長児    3%      6%      9%

        口腔粘膜・舌    乾燥    著しく乾燥      しわ

        涙      正常    なし    なし

        大泉門・眼球陥没        なし    軽度    強度

        皮膚    乾燥    著しく乾燥      網状斑

        脈拍・脈圧      頻脈    頻脈    頻脈・弱い

        意識    正常    傾眠・易刺激性  昏睡

  (*2)維持量

      最小限,生命維持に必要なエネルギー消費の際必要な水分量

       0〜10kg 100ml/kg/日

       10〜20kg 1000ml+50ml/kg(10kg以上の体重につき)/日

       20kg以上 1500ml+20ml/kg(20kg以上の体重につき)/日

  (*3)開始輸液

     ・糖尿病性ケトアシドーシス,幽門狭窄症,副腎クリーゼ(副腎性器症候群など)が

      疑われるときは生理食塩水で開始する

・ それ以外はNa75〜90mEq/Lの1/2生理食塩水に近い組成のもので開始する

  (*4)輸液の変更

・ 排尿確認後,また輸液開始前の電解質確認後,維持輸液などのカリウムを含む組成液に変更する

・ 高張または低張性脱水(血清Na130mEq/L>,150mEq/L<)は,小児科コンサルト



2. 維持輸液

1)水分量

   尿量+不感蒸泄量

   腎機能が正常なら上述の計算を行う

2)電解質

   原則として,尿中に失われるNa,K,Cl,HCO3-を補う

   腎機能異常,脱水,溢水がなければ

            Na      25〜35mEq/L

            K      20〜25mEq/L

            Cl+HCO3-       50mEq/L

    (ソリタT3,ソルデム1,フィジオゾール3号,KN3Bの組成)



3. アシドーシスの補正

代謝性アシドーシスの時,呼吸で十分代償してもPH7.25以下なら補正する.

まず8.4%メイロン(1ml=1mEq)を1ml/kg静注.

(1ヶ月未満の新生児はN/Sで2倍に希釈し,1ml/kg静注)

―BE×0.3×体重×1/2を維持液に混注してもよい

小児科にコンサルトする



4. 高カリウム血症

1) 急性糸球体腎炎などの急性腎不全,副腎不全(副腎性器症候群など)で生じる

2) 不整脈で気づかれることが多い.あらゆる不整脈を生じ得る

3) 血清K値が6mEq/Lを越えると治療を要する.

6〜7mEq/L  

 ケイキサレイト(カリメイト)1g/kg/dose+20%ソルビトール(カリメイト1g/4ml)

 注腸または経口,4〜6時間毎

7mEq/L以上 

  グルコン酸カルシウム(8.5%カルチコール)1ml/kgをゆっくり静注

  8.4%メイロンを1ml/kgゆっくり静注        

  GI療法(グルコース・インスリン)

   ブドウ糖5gに対し,インスリンT単位とし,ブドウ糖液0.5g/kg/時

 

5. 低カリウム血症

1) 血清K値が2mEq/L以下は緊急症.緊急度に応じ経口または静注で補う

2) カリウム投与の目安

(1)1mEq/L上昇させるのに,2mEq/kgを2日以上かけて投与する

(2) 静注では40mEq/L以上の組成,0.5mEq/時(最高10mEq/時)以上の速度で入れてはならない



                 小児科 吉村 博