救急室での検査



1)多くは問診と視診で診断可能であり,救急室での検査は必要最小限にとどめる

2) 小児は採血,採尿など検体の採取は成人よりも手間がかかる.

3)検査結果が判明するまで時間を要する

4)必要と判断したら,何のために,誰のためにやるのかを考えること

5)どの検査が必要か

   セット検査にただ○をつけるだけの検査指示はやらないこと

6)あくまで検査は診断に至るまでの補助であり全てではない

7)検査を出しても,小児期全体に共通する正常値はない.常に年齢を考慮し,その年齢での正常値

  を参照し異常か正常化の判定を行う.



1. CBC

1) 検査項目

   白血球数,赤血球数,血色素,ヘマトクリット,MCV,MCH,MCHC,血小板

2) 白血球分画は,感染症が強く疑われる場合にのみオーダーする.必ず理由を明記すること



2. 生化学検査

1) 検査項目

   BUN,Na,K,Cl,血糖,アミラーゼ(尿・血液),クレアチニン,総ビリルビン,

   直接ビリルビン,アンモニア

2) 乳児で静脈採血が困難な場合は,踵をカットしてマイクロティナーで採血することもできる

3) 輸液療法が必要な場合は,開始前にBUN,Na,K,Cl,血糖を測定する

4) アンモニアは平日日勤帯は検査室で可能だが,それ以外は簡易のアミテストで代用する



3. 血清検査

1)基本的に緊急検査として必要なものはCRPのみである.

  その他の多くの血清検査は検体保存の形で行われる



4. 尿検査

1)強く尿路感染症が疑われるときは必ず,培養検査を併せて提出する

  導尿または恥骨上膀胱穿刺を行い採取する

  採尿パックでの培養検査は無意味である

2)輸液が必要な児



5.髄液検査

1) 細胞数,蛋白,糖,赤血球数

2) 必ず培養検査を併せて行う

3) 肉眼的性状や実施時間を記録し,できるだけ圧も測定する

4) スメアも確認する



6. 培養検査



1)咽頭培養:1歳以上の扁桃炎,咽頭炎

     A群β溶連菌の有無が目的であり,感受性検査は不要である

2)尿培養 :尿路感染症が疑われるとき.同時に尿のグラム染色を行う

     採尿方法を記載すること(導尿,膀胱穿刺,中間尿)

3) 耳漏培養:中耳炎,外耳道炎が疑われるとき.同定された菌が必ずしも起炎菌とは限らない

4) 膿培養 :膿痂疹,蜂窩織炎など.グラム染色も同時に行う

5) 血液培養:敗血症が疑われるとき.全例コンサルトとなる

6) 髄液培養:髄液検査を施行したもの全例.髄膜炎が疑われる時は,グラム染色を同時に行う

7) その他:体液(腹水,胸水など)も採取した場合,培養検査を行う



7.便潜血検査

1) 緊急項目ではないが,救急室で測定可能である.

2) グアヤック反応が陽性なら病的である

3) オルトトルイジン反応は感度が鋭敏で食事でも陽性になる.しかし陰性なら確実に潜血反応は

  陰性である



8.血液ガス分析

1) 喘息発作重積など,呼吸障害が強く酸素投与を必要とするもの

2) 糖尿病性ケトアシドーシスが疑われる場合

3) 多くは緊急のコンサルトを要することが多い



9.凝固検査

1) 緊急項目ではなく,後日に確認してもらう

2) あらかじめ血液凝固用試験管(セラピッツC)に採血し,血漿分離後凍結保存してもらい,平日に検査してもらう



10.レントゲン検査

1) 安易なオーダーをしないこと.適応をよく考えること

2) できるだけポータブルではなく放射線撮影室で撮る

3) 撮影したら,必ず所見を診療録に記載すること

4) 胸部X線

   肺炎,初診の気管支喘息発作,気道異物が疑われる場合,心疾患など,

5) 腹部X線

   単に腹痛のみでオーダーしないこと