1.発熱の主な原因
発熱患者をみる際,常に感染症か否かを考える.2.早期対応の必要な疾患
@感染症:ウイルス,細菌,その他(寄生虫など)
A膠原病:SLE,成人スティル病など
B悪性腫瘍:悪性リンパ腫など
Cその他:薬剤アレルギー,亜急性甲状腺炎,亜急性壊死性リンパ節炎など
治療の遅れ,不用意な帰宅可を避けるため,以下の患者をみたら素早くコンサルトする.3.感染臓器と起炎菌
@菌血症を疑う:悪寒戦慄,高熱(老人や衰弱した者は微熱や低体温 り),頻脈,多呼吸,低血圧,不穏・昏迷などの意識障害.
A髄膜炎を疑う:頭痛「こんなにひどい頭痛は初めてですか?」,高熱,悪心・嘔吐,意識障害,項部硬直(初期は軽度).
B脾臓摘出者,DM,ステロイド・抗癌剤使用者,透析,移植,心臓弁置換者,HIV.
C出血斑(点状):心内膜炎,髄膜炎菌,A群溶連菌,黄色ぶどう球菌,DIC.※白血球数,CRPのみで重症度を判断してはならない.
※悪寒の分類
・悪寒戦慄(shaking chill):毛布を何枚かけても,歯がカチカチして体のふるえが止まらない.
・悪寒(chill):毛布を何枚かかぶりたくなる.
・寒気(chilly sensation):セーターを羽織りたくなる.
感染臓器と患者背景(年齢,基礎疾患,酒,タバコなど)がわかれば,起炎菌の予想がつく.これに塗抹検査を加えることで,診断はより確実になる(表).患者の訴えを中心に,限られた時間内で要領よく問診,診察する.4.疾患別注意点
1)敗血症性ショック5.診断のつきにくい疾患と診断のヒント
・CVPより前に,まず抗菌薬を投与!
2)髄膜炎
・1時間以内の抗菌薬が予後を決める.
・うッ血乳頭,脳ヘルニア徴候(昏睡,瞳孔不同,マヒ)が れば腰椎穿刺は控える.血培後,抗菌薬を投与しながらCTを撮る.
・意識障害を伴う無菌性髄膜炎は,脳炎を疑う.
・化膿性髄膜炎が無菌様の所見をとることが る:不完全治療,結核,レプトスピラ症,糞線虫症,梅毒,脳膿瘍,クリプトコッカス
3)扁桃腺炎
・ウイルス性が多い.細菌性は片側性,汚い侵出物,有痛性リンパ節腫張を伴うことが多い.
・扁桃腫張の無い咽頭痛は,喉頭蓋炎を疑う.
4)肺炎
・脱水患者は輸液後に喀痰,ラ音,胸写所見を明らかにする.
5)尿路感染症
・中間尿の採れる者はやたらと導尿しない.
・菌血症を疑う時は,素早く導尿するとともに残尿を測定する.
・男性の尿路感染は前立腺炎を疑い直腸診を.
6)下痢
・腸炎に伴う 痛にH2ブロッカー,制酸剤を投与してはならない.
@心内膜炎:既往の弁膜疾患,心雑音,四肢末端の出血斑.6.意識の無い患者の発熱
A 腔内膿瘍:老人の胆道感染,肝膿瘍,虫垂炎は症状が乏しい.
B結核:常に疑う.
Cレプトスピラ症:1-2週前後の川,池,泥水との接触.頭痛,結膜充血,下肢腿の筋肉痛.血液,髄液をコルトフ培地へ.
D糞線虫症:下痢, 部膨満,イレウス,GNRの肺炎,髄膜炎,菌血症など多彩.
E腸チフス:徐々に高熱にいたる,比較的徐脈,下痢より便秘,白血球減少.
まず尿路感染,肺炎,褥瘡,蜂窩織炎,無気肺を考える.疥癬も忘れずに.7.抗菌薬をはじめる前に
感染巣と疑う部位から適切に検体を採取し,塗抹検査と培養検査に供することを原則とする.血培は悪寒戦慄および悪寒を訴える者,重症感の る者(2項を参照),感染源不明のまま抗菌薬を開始する際などを中心に積極的に採取する.薬剤アレルギーと妊娠の有無を再度確認する.8.隔離室の適応
結核,水痘,はしか,流行性耳下腺炎,風疹,外国帰りの下痢,髄膜炎菌感染症などの法定伝染病を疑う時.9.帰宅時の注意点
・培養を提出したら,必ず外来でフォローする.主な感染疾患と起炎菌、当院の抗菌薬の使用例(表)
・アセトの処方は5包までとし,飲み切っても解熱しない時は,再来するように説明する.