腹痛の患者を診察するに当たっては,外科的処置が必要な患者か否かを判断することが重要なポイントである。6時間以上経っても腹痛が改善あるいは増悪するならば急性腹症の可能性が高い。1.腹痛患者の診察の要点
<既往歴>2.腹痛患者の取り扱いの実際
手術既往の有無,消化性潰瘍やこれまでの腹痛の既往
不整脈・弁膜症・虚血性心疾患の心疾患<現病歴>
腹痛の出現した時間,部位,性状等
便の性状(下痢・タール便,血便),尿の性状
発熱・悪心嘔吐の有無
薬剤の使用の有無,飲酒の有無
月経歴や妊娠の有無<臨床所見>
全身所見:vital sign(ショック,脱水の存在に注意)
腹部所見:視診→腹部膨満,手術痕,腫瘤(ヘルニアの有無も確認)
触診→Tenderness,Reboud tenderness,Rigidityの有無
聴診→腸雑音亢進 or 低下 or 正常
直腸指診:圧痛,腫瘤,血便,タール便等の有無<諸検査>
血液検査:CBC(WBC,分画,HCT)
Chemi(BUN,電解質,血糖,血中・尿中アミラーゼ)
血液型・交叉(手術や輸血必要例,はっきりしない場合は型のみ)
検 尿:血尿の有無,糖,蛋白,沈渣
画像診断:腹部単純撮影(立位,臥位)胸部単純(立位)
立位をとれない場合は左側臥位(腹部単純)
急変の可能性のある患者は出張撮影とする
Echo,CT,血管造影などの特殊検査は原則としてレジデントが
オーダーする
妊娠反応:子宮外妊娠等が疑われるとき*緊急処置を要する状態か否かを診察始めにまず判別する
*腹痛の原因は必ずしも腹部疾患だけとは限らないので注意
心窩部痛→心筋梗塞,季肋部痛→胸膜炎,下腹部痛→睾丸回転症
*急性腸間膜血管閉塞症は急を要する外科的疾患の代表的なものであるが,
診断は困難な場合が多い。初期では痛み(激痛)の割に腹部症状が軽微で
vital sign も侵されないため,つい判断を誤りがちである。老人や心疾患
(不整脈,弁膜症等)を有する患者に突然発症した腹痛(激痛)の場合は常
にこの疾患を疑うことが重要である。
*老人場合は疼痛,発熱,白血球増多等の所見が軽微であるので注意が必要
*診断が確定するまで鎮痛剤は投与してはならない(症状のマスク,ショック
の危険性)
3.急性腹症の患者の処置
ショックの患者は応援を求め,すぐにショックの治療を開始する4.その他の患者の治療・処置
輸液ラインの確保(重症例ではCVPラインも)
N.P.O(絶飲食)→患者に直接指示説明する
NGチューブの挿入
Foleyカテーテルの留置(重症例)
1)胆石・胆嚢炎
輸液
鎮痛剤
抗生剤
外科へのコンサルトの適応
2)総胆管結石3)膵炎
輸液
鎮痛剤
抗生剤
外科へのコンサルトの適応4)憩室炎
輸液
鎮痛剤
抗生剤
外科へのコンサルトの適応5)胃・十二指腸潰瘍
輸液
制酸剤
鎮痛剤
抗生剤
外科へのコンサルトの適応6)腸閉塞;外科へコンサルテーションする。