喘息発作時の治療
急性発作時の治療は以下の表に示すように、重症度に応じて臨機応変かつ迅速に行う。
 

重症度	症状・所見	治療
軽 症	歩行可能、横になれる 　　　　　　 簡単な会話が可能 吸補助筋の使用はみられない 呼吸数<100 Wheeze 0度 PEER＞80%（１回目ベネトリンネブライザー後） SaO2 ＞95（室内気で）	ベネトリンネブライザー吸入（超音波ネブライザーの場合；ベネトリン0.5ml+生理食塩水5ml）20分毎2〜3回吸入 反応良好なら帰宅 反応不良なら中等症へ
中 等 症	苦しく横になれず、坐位を好む 一文を話すことが困難 興奮気味 呼吸補助筋の使用が観察される 脈拍数　100〜120 Wheeze　1度 PEER　60〜80% SaO2 90〜95%	ベネトリンネブライザー；20分毎3回吸入、その後1時間1回吸入 酸素吸入開始を検討；SaO290%以上に維持する。ネブライザー開始時に一過性に低酸素血症を呈することがあるので注意する。 ネオフィリン250mg+ソリタT3 200mlを静脈内負荷投与。但し、テオドール6時間以内服用の場合は負荷せず、即維持量にする。。6〜12時間の場合半量負荷にする。 ソルコーテフ100mgの6〜8時間静脈内投与を開始する。
重 症	苦しくて前屈坐位となる 会話困難（単語区切りで話す） 興奮気味 呼吸補助筋の使用が観察される 脈拍数＞120 Wheeze　2〜3度 PEER　60%未満 SaO2 ＜90%	ネオフィリン維持量を投与。若年成人(<60才)  喫煙者；0.9mg/kg/hr 非喫煙者；0.5mg/kg/hr 高齢者(≧60)；上記維持量×0.75 心機能、肝機能障害；上記維持量×0.50 ボスミン0.3mgかブリカニール0.3〜0.5mg皮下注を検討 抗コリン薬の吸入を検討 入院
呼 吸 停 止 切 迫	チアノーゼ、意識障害、呼吸停止 非協調性の呼吸運動 徐脈 呼吸補助筋の使用が観察される Wheeze　4度 PEER測定不能 SaO2 測定不能	気管内挿管 人工呼吸器

• Wheezeの強度分類（Ｊｏｎｎｓｏｎ）
• 　
• ０度　Wheezeがまったく聴取できない
• １度　強制呼気時のみ聴取できる
• ２度　平静呼気時にも聴取できる
• ３度　平静呼吸下で、吸気・呼気ともに聴取できる
• ４度　いわゆる　ｓｉｌｅｎｔ　ｃｈｅｓｔ
• SaO2＜90または脈拍数≧110/分を示す場合は最初から酸素吸入を開始する。
• 補液；通常、大量の補液は必要ないが、経口摂取ができない場合、脱水が存在する場合などには必要に応じて検討する。
• アミノフィリンは推奨されていないが、発作が長引いた場合には検討する。血中濃度に配慮しながら静脈内投与を行なう。（可能なら血中濃度を測定する）通常、負荷投与（5〜6mg/kg）15分以上かけて静注した後、維持投与(非喫煙者　0.5mg/kg /時 、喫煙者　0.9mg/kg /時)を行なうが、治療開始前６時間以内にキサンチン誘導体の投与歴がある場合には負荷投与は行なわず維持投与から開始する。 　尚、患者の年令、心・肝機能、併用薬剤などにより、投与量を調整する必要がある。　（60才以上　×0.75　　心・肝機能異常　×0.5）

 
• 感染症がないかぎり、抗生剤投与は不要である。
• 合併症の有無の検討は重要である。とりわけ、発作の改善が得られない場合においては細菌感染症、気胸、気縦隔、無気肺などの有無を検索し、対処する必要がある。
• 評価；治療に対する反応の評価は患者のバイタルサインのみならず、ピークフロー値を経時的に測定して行なう。治療開始後1２時間以上にわたり十分な改善が得られない場合には、入院加療を検討する。一方、患者を帰宅させる判断は、呼吸苦の消失、生命徴候の安定化、および聴診所見、ＰＥＦＲ、ＳａＯ2 の正常化を目安とする。　
• 判断；帰宅させる際には、吸入ステロイド剤を普段の２倍に増量し、かつ経口ステロイド（プレドニン）の負荷投与を行い、１週間以内に主治医の外来を受診させる。　プレドニン　は帰宅当日から服用開始させる。例　プレドニン３０mg／日　２日間 ２０mg／日　２日間 １０mg／日　２日間