動悸
動悸とは心拍動の不快な自覚をいう。不整脈または器質心疾患による心臓性のものと非心臓性のものがある。非心臓性の動悸には運動、精神興奮後、貧血、甲状腺機能亢進症、発熱などにともなう洞頻脈があり、これは基礎疾患または状態を改善する。

来院時、動悸が続いている患者にはまず血圧や意識状態が保たれているかチェックしつつ心電図をとる(モニターおよび12誘導)。

  1. Narrow QRS の規則的な頻拍をみたら以下の不整脈を鑑別する。
    1.  
    2. 洞頻脈または洞結節性頻拍症(SA node reentry)
    3. 心房性頻拍(atrial tachycardia)
    4. 心房粗動(A-flutter)
    5. 正方向性房室回帰性頻拍(orthodromic AVRT)
    6. 房室結節性頻拍(AVNRT)

    7. 以上narrow QRS tachycardiaではPとQRSの関係からその機序まで類推しうる。最も多いのは、orthodromic AVRT とAVNRTでありこれで90%以上をしめる。両者とも房室結節がリエントリーの回路に含まれるのでATP/Verapamilが有効である。ついでA-Flutterである。A-flutterやatrial tachyは回路内に房室結節を含まないのでATPを使用しても房室伝導比がさがり心拍が減るのみで頻拍は持続する。
       

  2. Narrow QRSでirregularly irregularな場合心房細動である。
    1. 慢性か発作性か、持続時間は、基礎疾患は、左房径は、などによりgoalが異なる。もし細動の停止が目的ならI群抗不整脈剤を静注または経口投与するかQRS同期で200-300jにて除細動 (心筋梗塞急性期または心筋症/弁膜症で血行動態が悪い場合)。もし心拍のコントロールが目的ならverapamil/digoxin/beta-blocker を静注または経口投与する。急性の心房細動でも持続が長いなら、血栓栓塞のriskはあることに留意。
       
  3. Wide QRS regular tachycardiaを認めればまず心室性頻拍(VT)を疑う。
    1. その他に可能性として脚ブロックをともなう上室性頻拍症、Mahaim束を介する頻拍、逆方向性房室回帰性頻拍症のことがある。血行動態が落ち着いていれば、xylocaine 50 mg multiple bolus ivまたはprocainamide 50-100 mg/minでtotal 200-1000mgの使用で洞調律に復することもあるが、多くの場合ショックとなっており緊急に除細動を要することが多い(100-200 jで可及的にQRS同期)。 ERでは鑑別に十分な時間をさかず、VTかPSVTか迷うときは VTとして治療するか除細動を選択すべきである。VTをPSVT として治療すると血行動態の悪化をまねくことがある。
       
  4. Wide QRS irregular tachycardia
    1. 脚ブロックをともなうA-fib、WPWに合併したpreexicitedA Fib、Torsades des Pointes(多形性心室性頻拍)の可能性あり。WPWのA-fibでは房室伝導は副伝導路を介するものが優位で心拍が異常に早くなりやすくVfへ移行することがあるので直ちに除細動。Verapamil/digoxinは禁忌。 Torsadesではshort burstのことが多く除細動はできないこともある。電解質(低K, 低Mg), 徐脈、薬剤(Ia群、向精神剤など)によるQT延長が原因で治療はK補給、Mg1-2g iv/15 min、心拍をあげるためpacing, isoproterenolなど。
       
  5.  PVC /PAC が原因なら(基礎疾患、数、パターン)により異なるが、止めるためならxylocaine ivまたはprocainamide経口、場合によりsolanaxなどのtranquilizerを用いる。

 
動悸があったが、来院時すでに改善している場合。
動悸のパターンについて詳しく問診する。起こり初めは突然か徐々にか?持続は一瞬で繰り返すのか持続的なのか?誘因は?などでかなり不整脈をしぼれる。失神や呼吸苦をともなっていたりしないかも大切である。ERまたは外来でのHolter/心エコーなどの必要性を評価する。一般に失神を伴っていれば入院させるべきである。