意識障害

意識障害にて来院する患者は,多く生死にかかわる場合がある.それゆえ慎重に対処せねばならない.その理由は大きく2つある.すなわち意識障害をきたす疾患が,頭蓋内だけでなく頭蓋外の疾患にもあるため病態が複雑である.また意識レベルの低下がさらに急激に病態を悪化させる可能性がある(たとえば低酸素状態や代謝障害に気づかず放置した場合).
1.初期対応(ABC);意識障害患者が来院したらまず
  1. 意識レベルをチェックし、上気道の確保(Airway)
  2. 呼吸の有無自発呼吸の有無(Breathing)、酸素投与
  3. 血圧,脈拍,体温を確認(Circulation)、血管確保  自発呼吸がなければ直ちにCPRを,また自発呼吸があっても気道障害があれば,直ちに気管内挿管と補助呼吸の準備をせねばならない。
  4. さてバイタルサインが確認できたならば意識レベルを再確認し,原因を追求していく.患者本人からの現病歴の聴取は困難であるから救急隊や家族から聴取し,できるだけ早急に意識障害の原因の的を絞っていくことである
     

  5. 低血糖をデキストロスチックで確認したら、50%プドウ糖2A静注。
  6. 低栄養、アルコール関連の疾患は塩酸チアミン100m g静注。
*Do DONT! (Dextrose, Oxygen, Naloxon, Thiamine) の投与
2.意識障害の診断にあたって
(1)詳しい病歴をとることは、大事であるが出来ないことが多い。
(2)自殺企図が疑われる場合は、現場に残されている薬物を取り寄せること 。
(3)限られた埋学所見と検査成績から障害の病態を知ることが大切で次の5点 に注意する。
   a、意識の状態(JCS,GCSなど〉
   b,呼吸のパターン
   c,瞳孔の大きさとその反応
   d,眼球運動(人形の目現象)
   e,四肢の反応(麻痺、除脳硬直、除皮質硬直、不随意運動など)
   *意識障害の解剖学的基盤は面側大脳半球の病変(又は広範な一側病変)か又は 脳幹網様体の病変である。

3.意識障害をきたす疾患分類

 (1)テント上病変

  1. 発生初期には大脳半球病変による局所神経徴候(テント上の病巣);片麻痺、知覚障害、視野障害、 失語症、焦点性痙攣等 がみられることが多い。
  2. 昏睡は脳ヘルニアの進展とともに進行し、間脳→中脳→橋→延髄レベルの障害を示唆する神経症状が順次出現する。
  3. 病変の進行による鈎ヘルニアと中心性ヘルニア
       a,鈎ヘルニア:病変側の瞳孔散大、意識低下、動眼神経麻痺
                チエーンストークス呼吸
          内科的緊急状態で脳外科処置やグリセオール、マニトールが必要 。
       b. 中心性ヘルニア:視床に病変があるとき、両半球が下方に偏位して生ずる。     
          初期は傾眠、不穏、ため息、あくび等がでる。

 (2)テント下病変
  1. 橋出血(急激な脳幹障害)や髄膜腫(外部から徐々に脳幹圧迫)等大後 頭孔ヘルニアによる延髄障害で心肺停止することあり小脳出血や小脳梗塞は外科的対象となりうるこ とを銘記。
  2. 発生から昏睡までの時間的経過は早い。
  3. 片麻痺側へ向かう共同偏視、MLF症候群、skew deviation、oculara bobbing、pinpoint pupilなどの脳幹障害を示唆する症状がみられる。(これらの症状はテント上病変による脳ヘルニアでは一般にみられない。)
 (3)広範な中枢神経病変又は代謝性病変
特徴:
  a,対光反射あり、縮瞳していることが多い
  b,一般的には局所の脱力はないが、局所症状を呈することあり、
  c,振せん、アステレキシス、ミオクローヌス等出現
  d,電解質、血液ガス、腎機能、血中アンモニア、肝障害出現等
意識障害の主な原因:
  a、低酸素血症、虚血性脳症、低血糟、サイアミン欠之。
  b,全身疾患;肝性脳症、尿毒症、CO2ナルコーシス、糖尿病性昏睡、下垂体卒中、        
    甲状腺中毒及び機能低下、橋本脳症、副甲状腺機能亢進及び機能低下 、副腎機能低下、
    敗血症
  c,中毒、鎮静剤、向精神薬、坑痙攀剤
  d,電解質、及び酸塩基平衡障害;低ナトリウム血症、高カルシウム血症
  e,体温調節障害、熱射病
  f,中枢神経系炎症または浸潤性疾患、髄膜炎(脳炎)クモ膜下出血
  g,痙攀に伴う意識障害
(4〉精神科疾患に伴う意識障害
  a,ヒステリー;開眼しようと試みると固く眼瞼を閉ざす。
             カロリックテスト正常
                脳波、正常
  b,緊張病性昏睡(catatonic stupor)
     開眼しているが無反応、
     対光反射あり、
     眼球運動あり、
     四肢硬直
     カタレプシー(不自然な状態て動作を一定に保ちづける)

覚え方1;AEIOU Tips
A I U E O T I P S 
ア イ ウ エ オ イ プ ス 
A Alcohol
I Insulin ( hypo/hyper-glycemia )
U Uremia
E Encephalopathy ( hypertensive, hepatic ) 
Endocrinopathy ( adrenal, thyroid ) 
Electrolyte ( hypo/hyper-Na,K,Ca,Mg ) 
O Opiate or other drugoverdose 
decreased O2 ( hypoxia, CO intoxcation ) 
T Trauma 
Tempetature ( hypo/hyper ) 
I Infection ( CNS,sepsis, pulmonary )
P Psychogenic 
Porphiria
S Seisure, 
Syncope 
Shock Stroke,SAH 
 
覚え方2

  1. 外傷(脳挫傷等々)
  2. 内科疾患(脳血管障害、低血糖等々)
  3. 環境(一酸化炭素中毒、熱射病等々)
  4. 薬物中毒
  5. 精神科疾患