耳鼻科
1.耳出血
原因
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直接的外耳道、鼓膜損傷(めまいを伴えば、ER 入院、耳鼻科コンサルト)
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下顎打撲による外耳道前壁の骨折(耳鼻科コンサルト。夜間であれば ER 入院翌朝耳鼻科コンサルト。下顎骨骨折の有無もチェックする)
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側頭骨骨折(顔面神経麻痺、めまいの有無をチェックする。遅発性に出現することもある)
治療
出血に対する特別な治療は、殆ど必要でない。自然に止まることが多い。抗生剤投与。
2.鼻出血
時には、輸血、入院、手術を要する場合がある。
診断
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出血の程度:貧血が疑われる場合は CBC を提出し輸血の必要性を判定する。
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出血部位
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キーゼルバッハ部位:90%はこの部位からで止血も容易である。
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鼻中隔前上部:前篩骨動脈からの出血が多い。
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鼻腔後部:下甲介後端付近からの出血で大量出血が多く、最も止血困難。
原因
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局所:外傷、鼻副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症、腫瘍
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全身:高血圧、動脈硬化、血液疾患
止血処置;仰臥位でなければ処置が行えない場合を除き、坐位で行う。
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ガーゼタンポンによる止血(キーゼルバッハからの出血はこれで止まる。)
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止まらなければ後部あるいは上部からの出血である。
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3000倍ボスミンを浸した長い1本のガーゼを出来るだけきっちり詰める。
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止血したら帰宅させてもよいが、一番近い外来日に耳鼻科を受診させる。
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詰めたガーゼが出てきたら引っ張らないでハサミで切るようにアドバイスする。
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外来日までの抗生剤を処方する。(ABPC等)
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バルーンによる止血(1による止血が出来ず、かつ耳鼻科医がいないときおこなう)
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Brighton Epistaxis Balloon を使用する。
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キシロカインゼリーを塗り、前鼻孔より挿入する。
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先端が鼻腔後部に達してから、白のバルブより8〜12mlのエヤーで先端バルーンを膨らませる。
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シャフトを引っ張り先端バルーンが固定されたことを確かめ、手前側の可動バルーンをシャフトに沿って鼻前庭まで引っ張ってきて、緑のバルブから3〜4mlのエヤーで膨らませる。
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12〜24時間そのままの状態でバルーンを留置する。
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NPOとし点滴と抗生剤(ABPC)静注 を行う。
※ガーゼタンポン挿入によりERで止血していても帰宅後出血をくりかえす場合は、上部や後部からの出血の可能性が高く、日中であれば耳鼻科にコンサルトし、夜間であればER入院とし、翌朝耳鼻科コンサルト。特に抗凝固剤、血小板凝集抑制剤を服用している場合は大量出血となる場合があるので要注意。
3.異物
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外耳道異物
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成人では、昆虫、楊枝の軸、綿棒の綿など、小児ではプラスチック玉・ビーズ玉、豆類などが多い。
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耳用鉗子、異物鈎を使用する。
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昆虫異物は、外耳道にオリーブ油あるいは8%キシロカインスプレーを行い昆虫が死亡後摘出する。鼓膜穿孔のある症例ではキシロカインはめまい症状をおこすので要注意。
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球形の滑る異物等確実に把持出来ない異物、ききわけなく動く小児の場合は、無理せず耳鼻科コンサルト。
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鼻内異物
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小児の一側性の悪臭のある膿性鼻汁の時には、これを疑う。
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異物を鼻腔の奥へ押し込んでしまうと異物を気管へ誤嚥してしまうことがあるので要注意。
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球形の滑る異物や異物と鼻粘膜の間に隙間がなく確実に把持できない異物、ききわけなく動く小児の場合は、耳鼻科コンサルト。
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ボタン型アルカリ電池異物の場合はすぐに耳鼻科コンサルト。
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咽頭異物(ほとんど魚骨)
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小さな魚骨は、通常、口蓋扁桃か舌根扁桃に引っかかっている。
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ピンセット又は麦粒鉗子で除去する。舌根部の異物は、直視出来ないことがほとんどで、無理せず耳鼻科コンサルト。
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食道第一狭窄部異物(貨幣、骨片、肉塊、入れ歯、PTP等)
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食道異物としては、一番頻度が高い。
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咽頭痛、嚥下痛、圧痛を訴えることが多い。
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頚部前後高圧、側面軟線撮影を撮る。下位頚椎前方に相当し、輪状軟骨の石灰化部分との鑑別に注意。
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尖鋭異物は全麻下、直達鏡下の摘出を要する。NPOとし外科レジデントにコンサルト。レジデントは全麻の準備をしつつ耳鼻科医をコールする。
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食道深部の異物
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食道狭窄などが存在していることが多い。
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よく噛まず嚥下した食物が多い。
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胸骨後方に鈍的な圧迫感、食物通過障害等を訴える。
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NPOとし外科レジデントにコンサルト。尖鋭異物の場合、レジデントは全麻の準備をしつつ耳鼻科医をコールする。
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気管・気管支異物
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主気管支異物では、両肺野の呼吸音が異なる。
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異物のある側の肺は、縦隔移動と無気肺又は肺気腫を認める。
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吸気時と呼気時の胸部単純X線を撮る。
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小児科レジデントへコンサルト。(成人の場合は外科)
4.喉頭蓋炎
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嚥下痛、咽喉頭異物感、発熱を伴う。
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呼吸困難が急激に増強する場合がある。
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声はほとんど清明。
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頚部側面軟線撮影で喉頭蓋の腫脹を認める。
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直ちに入院。NPOとし抗生剤の静注を行う。
※ 咽頭痛の訴えが強い割に中咽頭の所見に乏しい場合にはこれを疑う。
5.扁桃周囲膿瘍
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一側の咽頭痛・嚥下痛・放散性耳痛、発熱、開口障害など。
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扁桃周囲粘膜の発赤腫脹。(患側前口蓋弓、軟口蓋が下垂し、口蓋垂は浮腫状に腫脹し健側に偏位)
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緊急処置を行う場合は、最も腫脹の強い部位を18番針で穿刺吸引する。(扁桃後面の約1.5cmのところを内頚動脈が走行していることを考え、吸引できなくても無理をしない。)
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入院させ、抗生剤の静注を開始する。耳鼻科コンサルト。
6.耳痛
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ERに耳痛を訴えて受診する患者の大半は急性中耳炎で、次いで外耳炎等である。
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鼓膜所見がとれなくても抗生剤を処方。
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外来は患者の通院しやすい耳鼻科で可。
7.急性副鼻腔炎(次の所見・症状がある場合要注意。)
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眼瞼発赤腫脹、眼球突出、視力障害
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頑固な頭痛、発熱を伴う
※まず、コールドウェル位、ウオータース位、側面の3方向単純X線撮影で副鼻腔陰影を認めたら、1は副鼻腔・眼窩、2は副鼻腔・頭部CT(出来れば造影CT)を撮る。耳鼻科コンサルト。視力障害、あるいは視力・視野などの検査が不可能なほどの眼症状があれば緊急コール。